紫外線が目にダメージを与えるのは、確かな事実
まず、はっきりさせておきたいのは、紫外線が目にダメージを与えるのは紛れもない事実だということ。例えば、雪山で長時間過ごした後に目が痛くなる「雪目(雪眼炎)」や、溶接の光で起こる「電気性眼炎」は、急性の紫外線ダメージの代表例です。
また、長い年月をかけて影響が出る慢性的なものとしては、白目の組織が黒目に伸びてくる「翼状片」や、水晶体が濁る「白内障」などが挙げられます。特に、白内障の中でも「皮質白内障」は紫外線との関連が指摘されていますね。これらは、ちゃんと証拠が積み上がっているリスクなので、「紫外線なんて気にしなくていい」という話ではありません。
鍵は「浴びたか」ではなく「どれだけ浴びたか」
ここが、今日いちばんお伝えしたいことです!
紫外線による目の病気を考えるとき、本当に重要になるのは「生涯でどれだけの量を浴びたか」なんです。これは「累積眼紫外線曝露量(COUV)」という言葉で研究が進められています。金沢医科大学の研究グループによる国際比較研究などでも、この「累積量」と白内障や翼状片の関係が詳しく調べられているんですよ。
つまり、少し浴びたかどうかの問題ではなく、何十年にもわたって積み重なった紫外線の総量が、病気のリスクを大きく左右するということ。だから、「屋外にいる人」と一言で言っても、一日何時間、何年、どんな環境で過ごしているかによって、その意味はまったく変わってくるんです。この「累積量」という考え方を知るだけで、紫外線対策がぐっと見通しよくなりますよね。
白内障や翼状片は「累積量」が語る病気
この累積量の効果が一番はっきり見えるのが、白内障です。
古い研究ではありますが、アメリカの漁業従事者を対象にした調査では、生涯の紫外線曝露量が2倍になると、皮質白内障のリスクが約1.6倍に上昇したと報告されています。これは、「紫外線を浴びれば即白内障」という単純な話ではなく、「量が積み上がるほど、特定のタイプの白内障が増える」という用量反応の関係が示されたものなんです。
翼状片も同じで、累積曝露量が多い人ほど多く見られます。まるで、目の表面にその人の生涯の紫外線量が刻まれているかのようですね。
だから、問うべきは「あなたは、どれだけ浴びているか」
「累積量」という物差しで見てみると、紫外線対策が必要な人と、そこまで気にしなくても大丈夫な人が自然と分かれてきます。
例えば、農業、漁業、建設業、交通整理など、長年屋外で仕事をしている方々。また、ゴルフ、釣り、サーフィン、登山、スキー、海水浴などを習慣にしている方。こうした方々は、生涯の紫外線累積量が大きくなるため、帽子やサングラスはとても合理的な選択です。ぜひ積極的に活用してほしいと思います。
一方で、オフィスワークや在宅勤務が中心で、買い物や通勤で少し外に出る程度、日陰を選んで歩くことが多いという方。こうした方々の累積量は、そもそもそれほど多くありません。コンビニに行くたびにサングラスをかけないと白内障になる、というレベルの話ではないんです。必要な対策は、人それぞれなんですね。
ちょっと待って!証拠が薄い主張もあるんです
紫外線対策の話には、確かなことと、そうではないことが混ざっていることがあります。いくつか、よく耳にするけれど、実は証拠が十分でない主張を一緒に見ていきましょう。
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加齢黄斑変性(AMD)と紫外線: 「紫外線を浴びるとAMDになる」という説明を見かけることもありますが、AMDと紫外線曝露の関連については、十分な証拠がないとされています。AMDは、加齢、喫煙、遺伝的な体質など、他の要因の方がより確立されたリスクとして知られています。
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「高齢だから、紫外線が網膜に届く」という説明: 実はこれ、方向が逆なんです。水晶体の紫外線透過率は、加齢とともに低下することがわかっています。つまり、若い目のほうが紫外線をよく通し、歳を重ねるほど網膜には届きにくくなるんです。「高齢者は紫外線で網膜が傷む」という説明は、少し単純化しすぎかもしれませんね。
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「白内障の手術をしたから、紫外線で網膜が焼ける」という不安: 現代の眼内レンズ(IOL)の多くは、紫外線をカットする設計が標準です。ですから、白内障手術後だからといって、紫外線で網膜が傷むという心配はあまり必要ありません。(ただし、紫外線カットとブルーライトカットは別の話なので、その点は注意してくださいね。)
こうした「単純化された不安」は、聞くとドキッとしますが、一つずつ根拠を見ていくと、意外と薄いことがわかります。自分で情報を判断するって、本当に大切ですね。
子どもたちのこと〜リスクと負担のバランスを考えよう
子どもの紫外線対策については、大人とは少し違う視点が必要です。まず、子どもの近視予防には「屋外で過ごす時間」がとても大切だということが、繰り返し示されています。屋外にいること自体が、近視の進行を抑える方向に働くんです。
では、子どもにサングラスは必要ないのか?もちろん、雪山や水辺、高地、真夏の連日の屋外競技など、累積量が大きくなるような状況では、大人と同じように目を保護することは理にかなっています。でも、平均的な子どもにとって、毎日のサングラスが減らしてくれる「上乗せ分のリスク」って、実は小さいことが多いんです。
低いリスクのために、子どもたちに「眼鏡」という負担(費用、なくす手間、わずらわしさ、そして「太陽は危険」という刷り込み)を課していないか、一度立ち止まって考えてみるのも大切かもしれません。ここでもやはり「どれだけ浴びるか」という物差しで考えることがポイントになりますね。
リスクではなく、快適性の話〜QOLの道具として
ここまで「紫外線対策」としてサングラスを論じてきましたが、サングラスにはもう一つ、大切な役割があります。それは「快適に過ごすための道具」としての顔です。
サングラスは、紫外線だけでなく、風、乾燥、砂ぼこり、花粉から目の表面を守ってくれます。ドライアイの方にとっては、症状を和らげる助けになることも。これは病気を予防するというより、日々を楽にするための使い方、つまり生活の質(QOL)を高めるためのものですね。
そして、まぶしさを感じやすい方(羞明)にとって、サングラスは快適性をぐっと上げてくれます。まぶしいと感じる方は、ぜひご自身の判断で使ってみてください。これは個人の自由で、否定する理由なんてまったくありません。
大切なのは、「快適性のための使用」と「病気予防のための使用」を混同しないこと。それぞれ分けて考えれば、どちらの使い方もすっきりと理解できますね。
なぜ「全員に同じ対策」が生まれるの?
紫外線対策って、本来なら「その人がどれだけ浴びるか」に応じて、濃淡があっていいはずですよね。屋外で何十年も働く人にはしっかり、日常を屋内で過ごす人にはゆるやかに…と。
でも、実際には「全員に、同じ対策を」という形で語られることが多いのはなぜでしょう?一つには、「みんなに勧める」方がメッセージとして分かりやすく、伝わりやすいからかもしれません。「あなたは高曝露群だからサングラスを、あなたは低曝露群だから気にしすぎなくていい」という丁寧な区別は、どうしても伝えにくいものです。
特に、学校を通じた製品の販売には、少し慎重でありたいなと思います。学校は特別な場所。「子どもの目を守るために」と案内されれば、たとえ希望者向けであっても、保護者としては「買わないと、うちの子だけ不利になるのでは?」という気持ちがどうしても生まれてしまいますよね。大切なのは、私たちが自分で情報を判断し、本当に必要な対策を見極める力をつけることだと思います。
おわりに〜必要な人に、必要な対策を
医学の世界では、リスクの高い人に、手厚く介入するのが基本です。全員に同じことを一律に勧めるのではなく、その人の状況に合わせて、濃淡をつける。それが、限りある注意と労力を、一番意味のあるところに向ける方法なんです。
紫外線対策も、まさに同じ。問題なのは、サングラスそのものではありません。サングラスは、必要な人にとっては良い道具であり、まぶしい人にとっては快適な道具です。問題は、リスクの濃淡を無視して、全員に同じ対策を、同じ強さで勧めてしまい、一律に不安を広げてしまうことにあるんです。
だから、最後に、この記事のメッセージをもう一度お伝えしますね。
紫外線を浴びたか、ではありません。どれだけ浴びたか、です。
そして、必要な人に、必要な対策を。
自分のリスクが気になる時は、専門家と一緒に確認できますから、どうぞ過剰に恐れず、まぶしければ心地よくサングラスをかけ、そうでなければ安心して、前を向いて日々を過ごしてくださいね!
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医療法人社団久視会 いわみ眼科

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